掃除機が飛ぶ

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4.掃除機が飛ぶ

先日テレビショッピングでダイソンの掃除機を買った。

安いのと軽そうなのが動機になった。

届いたときに すぐに使えるようにしておくべきだったのだが、

そのうち試してみようと放置していたのが、失敗だった。

やがて奥さんは断捨離と称して、掃除機の箱を捨ててしまった。

箱がなくなった掃除機は、しばらくたつうちに、本体と充電コードが切離されてしまった。

切離された電源コードは、やがてどの家電製品の電源かわからなくなり、無用とされて捨てられてしまった。

あとに電源コードを失った掃除機本体だけが 

どうにも動かない欠陥品として放置されてしまった。

「この掃除機 どうすりゃ動くのよ!」

奥さんは ダイソンの掃除機をソファーにむけてぶん投げた。

ダスト集積部分はガラス製だから、床に叩きつけられたら無残な残骸と化していたろう。

ソファーの上だったから、形を残せた。

失われた電源コードを別注で入手できれば、蘇るかもしてない。

とにかく、こうして電源コードを失って死体と化した電化製品が、

わが家にはいくつも放置されている。電源という手足を切断されたデバイスたちが、

亡霊のように横たわっている姿には、怖ろしいものがある。

奥さんの断捨離は、まとまりのあるデバイスをばらばらにして、

パーツを捨て去ることで、死体化していく工程である。

つまり「全体を解体して、記憶を引き剥がすことで、認知不能にしていく」

ということではないだろうか。

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