2. 保険証がなくなる。処方箋がなくなる。
奥さん 認知症ではないか?
と疑いだしたのには、もうひとつ訳がある。
病院に行くたびに保険証をなくすのだ。
さらには診察を終えて、薬局に行くと処方箋がなくなっている。
「処方箋、さっきあなたにわたしたでしょう!」
「いや、もらってないよ。」
薬局でいいあらそいが始まる。薬局のお姉さんが見るに見かねて
「途中で落としたのかもしれませんね。ちょっと病院までもどって見てきましょう。」
幸い薬局は病院の敷地内の一郭、至近距離なので、落としたのであれば すぐに見つかる。
でも、私には奥さんのバッグの内側ポケットにそれはしまわれているとわかっているのだが。
それは言わない。
言ったらバッグが飛んでくるからだ。
薬局のお姉さんがもどってきて
「やっぱり落としたのではないようですね。もういちどバッグの中を探してみて貰えますか?」
奥さんが口をゆがめながらバッグのなかをごそごそかきまわすと、
やはり、バッグの内側ポケットに差し込んであった。
なぜそうなるかというと、病院で支払いをしたときに、
明細書と処方箋を手渡されて いそいでバッグの内ポケットにしまいこみ、
そのことを忘れてしまったのだ。
奥さんには、同時に2つのことができない。
お金の受け渡しと、処方箋の受け渡しが同時にできないのだ。
多分お金の受け渡しの際に、小さなパニックに陥っていて、
お金を持っている手と 空いている片手で何をしたらいいのか、
あるいは何をしているのか、意識から飛んでいる。
こういうことは、いろいろなシチュエーションで何度も起きている。
だから支払いの時に 奥さんが処方箋などをうけとったら、
その瞬間に私の手に移しておくのが安全なのだ。
とはいえ、毎回それがうまくいくとは かぎらない。
状況によって毎回手順がちがったりするから、臨機応変でなければならない。
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