消し飛んだクリスマス・イヴ

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12月24日


今日はクリスマス・イヴだ。


だから どうってこともないが、

たまには楽しげなことをしてもいいだろうと、

数日前から

24日はセブンイレブンでケーキを買って、クリスマス・イヴをやるよ、

と言っておいた。


予定とか日程とかは、たいてい忘れ去られることが多くて、

「聞いていない」というのが嫁様の返事なのだけど、

一応この日だけは覚えていて、

クリスマス・ケーキを買うと言って2時頃いっしょに出かけた。

わたしは、電動カートで、嫁様は歩きで、カートを押すかたち。

車椅子を押すというのは、つきそいとか介護の典型だが、

実は、嫁様の場合足腰が弱って来ていて、

押す格好をしながら、カートに掴まって歩くのである。

つまり杖代わりに、カートに助けられる、その方がラクだと嫁様は言う。

そのようにして、セブンまで行って、

特別に包装されたクリスマスケーキをひとつ買った。

近頃は、表示の字が小さすぎてみえないので、

値段も確かめずに買ってしまった。


夜になって、さてクリスマス・イヴだから、

ケーキで盛り上がりましょうと、開けてみると。

まあ小さい、オヤという感じ、

皿に取り分けて食べるのだが おいしくない。

嫁様は、食べてまずいものだと、すぐ不機嫌になって、

皿を投げ飛ばしそうになることは、前に書いたかもしれない。

今回のケーキも、かなり、まずい。

レシートを見ると4400円もしている。

4000円も費やして これはないだろうと、嫁様はすこぶる機嫌がわるい。

しばらくしてから「今日の買い物に計算ちがいがある」と言い出した。

500円のところを5000円 払らわされているという。

わたしは、レシートもケーキの箱も、解体してごみ箱に捨ててしまったのだが、

嫁様は 計算に疑いをもっていて、
「あのレシートは、計算違いを店に正すためにとってあったのに、なんてことをするのだ」

という。

まさか 店が計算ちがいなどするはずがないと思うのだが、

そこは衝突を避けるために 私は ゴミ箱をひっくりかえして、

くだんのレシートを見つけ出し、嫁様にわたした。

この晩はひどかった。
夜中にもう寝ようか、というときに、
嫁様が スマホの充電ができないと、言いがかりをつけてきた。

充電器をどこかにもっていかなかったかという。


こっちは病人なんだから、寝るのは大事、スマホなど明日にしてくれ、

と思ったのだけど、

すぐに探せと、嫁様の声が言っているので

一階の部屋までおりてみると、事情はわかった。

充電器の電源はさしこんであるのだが、スマホに繋ぐコードが見当たらない。

嫁様は、コードだけはずしてどこかにもっていったらしい。

それをどこに置いたか忘れしまって、私が何かしたのだろう、

レシートを捨ててしまったように。充電器のコードも捨ててしまったのではと、

難癖をつけてきたのだ。

こういうことは、しばしばおこる。

たとえば、鏡がない。どこかにもっていったのだろう。とか。

目薬がない。あなたどこかにしまわなかった? とか。

自分でかたつけておいて、その場所を忘れてしまうので、

ひとが動かしたのだろうと難癖をつけてくるのだ。

目が見えないのと、記憶が飛ぶのとが あいまって、事件が起る。

だから、黙って鏡の行方とか、目薬の置き場を想定して、

探し出してやれば、一件落着となる。

しかし今回の充電コードはどこにしまい込んだのか、まだ出てきていない。

 ところで一夜が明けて、けちのついたクリスマスケーキの話題が突如浮上した。

嫁様は、計算違いの話で、お店に電話したらしい。

すると店主が、

「あのケーキはちょっと高すぎて、売れるはずないとおもっていた」、

ような話がきたという。

セブン側でも、実食してみて、

鎧〇というパティシエの監修と言うことで、

あの値段がつけられているが、

それほど美味しくないし、誰が買うのかね、などと話していたのだそうだ。

それを値段の数字が見えない、弱視の高齢者が買ってしまって、

桁がひとつまちがっていたと、クレームしたことになるわけである。


嫁様は、店側から聞いた話として、うれしそうに語ってきた。

「これで計算違いは解決したね」というと、
「それはまた別な話よ!」

と来た。

一応係争はおさまりそうだけれども、うちの嫁様は超絶しぶとい。

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