アスペルガ認知症 鬼嫁クロニクル
1.はじめての兆候
1.あれは いつのことだったかしら
アスペルガ症候群 発達障害
うちの奥さんのそれらしい症状に気づいたのはいつだったろう。
そもそもそれが病気だなどと思ったことはないのだけれど、
すこし変だな!
すこし行儀の悪い人だな!
ふと思ったことがあったっけ。
なにかのことで、仲間たち5,6人と
焼き肉屋で食事をしていたときだった。
だいたいこういうときは
鍋奉行のような人がいて
プレート上への肉を追加するとか
割口をたすとか、お肉を片寄せるとか 分配とかやってくれるのだけれども
うちの奥さんは そういうことは苦手らしかった。
ただ自分の分を黙々と食している。
ところが何かのことで だれかから肉のつつきかたとかで注意されたのだろう、
急に不機嫌になって
手にしていた箸をテーブルの上に放り出したのだ。
二人だけだったら ともかく、
5,6人もの集まりのなかで、これは不躾だろう!
失礼だろう!なんてことをするのだ!
と内心ふと思った。
あれが最初の気づきだったのではないかしら。
この違和感は一瞬のもので、すぐにみんなの談笑や箸の進みの中で消えていった。
箸を放り出したご当人も、しばらくしたら箸を取り直して、食べることに加わってきたので、
その後何事もなく流れて終わった。
だけど、あの箸を放り出すという行為は、何十年もたった今もつづいており、いまさらにエスカレートしてきているのではないだろうか。
ある状況に置かれたとき、自分をコントロールできなくなる、
という異常な現象なのではないか、
と今では考えている。 その小さな現れが、あの焼き肉屋で見えていたのだ。
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